No.32
2004.5.15
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あたか農園だより
-役目-
 これは、5月2日に行った用水路の整備です。
 田んぼを耕作している農家が出てきて毎年2回、みんなで雑草を刈ったりするのです。 こういう共同作業を地元では「役目-やくめ」と言います。田んぼだけでなく、畑周りの農道整備などもあります。
 最近はコンクリートの護岸が増えて、朝の一時間くらいで終ってしまいますが、用水が滞る事のないように昔から続いているお米を作るうえで欠かせない作業です。
 米作りにとって水は命。「我田引水」という言葉もあるように、水をめぐって争いも絶えなかったといいます。自然流水で上の田んぼから下の田んぼへと順に水を入れていた昔は、こういう作業がなければ、自分の田んぼに水を引くことが出来ませんから嫌でも助け合って「役目」を行い、それが地域の繋がりを深めていた面もありました。
 ところが最近、少し様子が変わってきました。圃場整備が進み給排水が分離され、隣の田んぼに関係なく好きな時にバルブを開けば水が取れるようになったせいか、「忙しいから・・・」「整備するところから自分の田んぼは離れているから・・・」などと言って役目に出て来ない人が増えてきたのです。
 兼業農家が多くなったりして農村の形態が大きく変わった事もあるかもしれませんが、
隣近所と調整したり、助け合ったりしなければ生活が成り立ちにくい昔と違って、便利になり、豊かになった現代では、人の世話にならなくても自分だけの力で生きていけるように思っている人が多くなったような感じがしてなりません。でも、田んぼの水のように遠くにある用水路の流れがやがて回り回って我が田を潤すように、目には見えなくても巡りめぐっていろいろな力に助けられて生きているのが人の姿ではないかと思うのです。
 今、私は柄にもなく教育に関わることになっていますが、子どもたちを取り巻く様々な問題を見聞きするにつけても、そういう世の中の風潮が大きく影響しているように思えてなりません。自らを謙虚に見つめ周りに感謝を忘れない大人が少ないから子どもたちが問題を抱えるのではないか・・・。
用水路のマコモを刈りながら、ふとそんな事が頭をよぎりました。
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