食の安全に不安を抱かせる事件などが続いて、農薬の安全性を問う報道も多いので、消費者の方も「登録農薬」という言葉も耳にされたことがあると思いますが、その意味をご存知でしょうか?
農薬メーカーが、製造した農薬を使用できる作物ごとに登録申請して国の許可を得るものです。農薬の容器には、使用できる作物名が明記してあります。たとえば、大根と書いてあれば、大根に対して登録が取れている農薬という意味です。それも、その作物の生育中の散布回数、水で薄める倍率、散布量、収穫までの日数など細かい規制があります。もし、抜き打ち検査で定められた使用基準では検出されるはずのない残留農薬量であったり、微量でも登録のない農薬だったりすると、不正な農薬使用ということで一気に信用を失い、産地も潰れかねません。ですから、農薬の使用について農家は、慎重なうえにも慎重にならざるえないのです。
もちろん、命に関わる食物ですから安全性の確保のためには厳しい基準も当然ですが、なかには首をひねりたくなるような事もあります。
先日、イチゴの登録農薬の一覧表を見たのですが、私が作っている小松菜や赤しそには使えない農薬が十数種類、しかも収穫前日に使えるようになっているのです。小松菜や赤しそは水でジャブジャブ洗ったりしますが、イチゴは強く洗うと傷んでしまいます。どうかするとそのまま食べたりするものです。どう考えても変でしょう?
この問題は、登録制度という仕組みにあるようです。最近は厳しい安全性が問われるため、農薬メーカーは登録許可を得るために催奇性や発ガン性などの安全性を証明するために莫大な費用をつぎ込まざる得ず、商品化しても回収可能な作物しか登録を取ろうとしないのです。つまり、純粋に安全という尺度だけで登録が行われているのではないということ。そのためにマイナーな作物ゆえに作りにくい状況におかれることもあるのです。
今年は、台風で痛めつけられたうえに、害虫のヨトウムシが異常なほど大発生。数少ない登録農薬を散布しても虫は知らん顔。メッシュ状態の小松菜や採種用の赤しそを見ていると、やっぱり、「何か変だよ登録農薬!」
登録農薬の不思議