No.66
2007. 3.20
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あたか農園だより
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文化の継承
 人参の収穫も終わり、少し時間の余裕が出来る貴重な農閑期です。
 この時期、気の合った農家仲間で旅行することになっています。今年は、お伊勢参りと熊野三山に行ってきました。

 伊勢神宮は、古くから全国の崇敬を集めただけあって、樹齢何百年という大木がいくつも茂る静かな林に囲まれたお社で、簡素な中にも荘厳な雰囲気があり、思わず厳粛な気持ちになりました。
 この伊勢神宮は、式年遷宮といって、20年毎にお社を建て替えるそうです。
 今あるお社は平成5年に遷宮が行なわれ、20年後の平成25年にまた建て替わる。すでにその準備が行なわれていると聞きました。
 
 何も、多額の費用と労力を掛けて、そう頻繁に建て替えなくても、と思いそうですが、20年という周期には理にかなった理由があるらしいのです。初めて建て替えに関わった若い人は見習いとして働き、20年後には中心的役割を担い、そのまた20年後には経験者として皆を指揮出来るというのです。こうして、建築の伝統技術が後世に途切れることなく受け継がれるのです。
 
 私の住む芦屋町には、鎌倉時代から室町時代にかけて茶の湯の名器と珍重された芦屋釜という国の重要文化財を鋳造していた歴史があります。(東京国立博物館
 それを復元しようと「芦屋釜の里」という町内の施設で取組んでいますが、特徴のひとつである鉄の厚さ2mm以下という釜を、現代の技術とすぐれた鋳物師の技をもってしても作ることが出来ません。
 一度途切れると、復元するのは困難な伝統技術もあります。20年に一度建て替える式年遷宮は、何を守り、何を後世に残すべきかを考えた先人の知恵だったのでしょう。日本が世界に誇るべき継承の文化なのかもしれません。

 その日本文化のベースになった農村は、今、すさまじい高齢化と過疎化。美田は耕作放棄地と変わり、子から孫への継承どころか、曾爺から爺へ止まりで終りそうな気配です。
 継承が途絶えればまた新しい文化が生まれるさ、と考えられれば気楽ですが・・・・。

 おかげ横丁で赤福を食べながら、そんなことも考えさせられた旅でした。
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